本センターの助教である船坂徳子らによる共著論文が,日本の学術誌Journal of Reproduction and Developmentに掲載されました!

  

 Seasonal changes in circulating gonadal steroid levels and physiological evidence for the presence of intrinsic circannual reproductive cycles in captive finless porpoises Neophocaena asiaeorientalis from the western Inland Sea, Japan.

瀬戸内海西方海域における飼育下スナメリの血中性ステロイド濃度の季節変化と内因性の概年リズムの確認

 

 

繁殖はすべての動物に共通に起こる現象です.動物たちは,それぞれに長い年月をかけて環境に適応し,種特有の繁殖生態を進化させてきました,それは,イルカの仲間においても同様です.私たちは生理学的なアプローチから,イルカたちが持つ繁殖生態の特徴を調べてきました.

 

 今回の研究では,日本を含む東アジア沿岸に生息するスナメリについて,2つの別の施設で飼育されている個体の血液中の性ステロイド(男性ホルモンの1種であるテストステロンと女性ホルモンの1種であるプロゲステロン)の濃度を測定しました.その結果,日長の季節変化がある施設で飼育されている雌雄2頭のスナメリの血中性ステロイド濃度は毎年同じ時期に上昇し,繁殖活動が春から秋に行われていることがわかりました.しかし,日長の季節変化がない施設で飼育されている雄1頭では,血中テストステロン濃度は毎年同じ時期に上昇せず,正確に9ヶ月周期でフリーランしていました.その後,この施設の日長(照明点灯時間)に人工的な季節変化をつけたところ,この個体の血中テストステロン濃度は毎年同じ時期(春)に上昇するようになりました.

 

本研究は,イルカの仲間がフリーラン周期を持つことを示した世界ではじめての論文です.人間では,環境変化がない状況に置かれると約25時間のフリーラン周期で活動するようになることは有名ですが,イルカにおいても同じようなフリーラン周期があり,外部環境の変化に体内の生理状態を合わせるためには日長の季節変化が重要であることがわかりました.これは,野生下で生き抜くための繁殖戦略の1つであると考えられ,水族館での繁殖推進にも役立つ情報になると考えられます.

 

※フリーラン:環境変化などの影響から逃れて,その生物に固有の周期でリズムが現れている状態.自由継続とも言われる.


写真撮影場所:海響館

 

論文:Funasaka, N., Yoshioka, M., Ishibashi, T., Tatsukawa, T., Shindo, H., Takada, K., Nakamura, M., Iwata, T., Fujimaru, K. and Tanaka, T. 2018.

Seasonal changes in circulating gonadal steroid levels and physiological evidence for the presence of intrinsic circannual reproductive cycles in captive finless porpoises Neophocaena asiaeorientalis from the western Inland Sea, Japan. Journal of Reproduction and Development, 64(2): 145-152.