本センターの教授である吉岡基と准教授である森阪匡通が大学院博士前期課程の学生として指導した,千藤咲らによる共著論文が,学術誌 哺乳類科学に掲載されました!

  飼育下のスナメリで観察された,長期的で頑強な個体間関係

  (Stable affiliative social relationships among captive narrow-ridged finless porpoises.)

 

生物の社会のしくみ(社会構造)は,その生物の集団を構成する個体を識別し,個体同士の行動から関係性を導き出すことで解明するという方法が使われてきました.これまでこの方法を用いて,ハンドウイルカには集まったり離れたりを繰り返す離合集散の社会が,シャチには母親の家系を中心とする母系の安定的な社会があることが分かっています.しかし,背びれがなく,体の色や模様に特徴のないスナメリでは,野生下において個体識別を行うことが難しく,社会構造を解明することは容易ではありません.

 

そこで,本研究では,鳥羽水族館(三重県)や南知多ビーチランド(愛知県)で飼育されているスナメリを対象に,どの個体が・どの個体に・どのくらい,「仲良し行動」や「攻撃行動」をするのかを観察し,その集団の関係性を調べました.さらに,その集団に個体が入ってきたり,出て行ったりするようなイベント(社会的かく乱)によって,その関係性がどのように変化するのかも調べました.

 

その結果,全8ペアの中に,長期的に仲が良かったペアが3ペアいました.さらに,これらのペアの中には,社会的かく乱があった際,ずっと仲良しのままのペアと,一時的に関係が悪くなるが,翌日以降には元の仲良しに戻ったペアがいました.これらのペアのうち2ペアは,年齢が異なり,血縁関係もない個体同士のペアで,そのうちの1ペアはさらに性別も異なっていました.この結果は,これまで言われてきた,「スナメリは単独もしくは母仔で生活する」という見解とは異なっていました.

 

本研究は飼育個体を対象としたものですが,今後データロガーやドローンといった技術を活用して,野生個体でも同様の研究ができれば,本研究で明らかになった関係性が野生個体でも見られるのかがわかります.そして,スナメリの社会構造が明らかになるに違いありません.

 

写真撮影場所:鳥羽水族館

 

論文:千藤咲,森阪匡通,若林邦夫,村上勝志,吉岡基.2021.飼育下のスナメリで観察された,長期的で頑強な個体間関係.哺乳類科学,61(2): 169-177.